野暮なはなし
「物理法則無視」を読んでここまでたどり着いて下さりありがとうございます。
私なりの考察を書きます。自分自身の解釈を大切になさってください。
「物理法則無視」
二人の少年が世の中から逃げる話。社会通念を物理法則として書きました。
「弁当とお金と勇気はありますか 点呼をします 総員「1」「2」」
これから逃げる二人の覚悟を、遠足に行くかのような口調で書きました。勇気の部分は覚悟でもいいかと思いましたが、言葉が強くなりすぎるような気がして止めました。二人の旅の始まりです。
「券売機という関数 xが硬貨yが行き先を示す」
難産の句です。「金を呑む券売機」というニュアンスの句にしようと考えていましたが、自販機を関数の例えに使うことを思い出し、関数になぞらえて作りました。電車に乗ってどこか遠くへ向かいます。
「ゴールへと目指せ初見の道だけで テレスクリーンは動いていない」
絵も句も一番最後に無理やり作ったのでまだ納得がいっていません。「バグ無し初見RTA」を下の句に置こうと思ったのですが力不足でした。誰にも見つからないように変な道を行く句ですがゲームと絡めるとなると難しいですね。敗北の一句です。「テレスクリーン」はジョージ・オーウェルの1984に出てくる監視装置です。ディストピア小説が好きだったら読んでください。
「中性子みたく放たるる僕らは物理法則無視して叫べ」
題名になった句です。科学大好きっ子クラブの皆さんはこの瞬間だけ目を瞑ってください。中性子というより中性子線の方が近いかもしれないです。「中性子みたく放たるる僕ら」を下の句に置こうとして唸っていた時に、「物理法則無視して叫べ」が急に閃いて、目の前が明るくなりました。砂浜で二人が遊んでいるところです。
「潮騒が響いていたあの貝殻に耳を当てても君の声はない」
完全に感覚で生まれた句です。絵だけが先に浮かんでいてそこに句をつけた形です。
海から帰る二人です。ここから夜になっていきます。
「蛾も蝶も違いなどないひらひらと舞っていずれはパピヨンと成る」
一番悩みました。下から二人を眺めている構図です。フランス語では蛾と蝶に区別をつけないという情報から思いつきました。蛾は汚いもの、蝶はきれいなものというのを否定することで、二人のこの世への「結局はどうしようもない」という諦念を描けていればいいなと思います。
「神様が君だったならこんなにも理由をつけて逃げることはない」
一番最初に浮かんだ句です。この句を終着点とした物語にしたくてこの本を作りました。
「僕」は神様なんて信じていないと思います。神様という存在は人類が生み出した宗教上のシンボルにすぎないと、ものすごく冷めた視点から見ています。彼からすれば「君が神様である」ことはあり得ません。でも「神様が君である」ことはあり得るんじゃないかと思っています。人間の君が神様というシンボルの立場に居ることは、可能性は限りなく低くともあり得ない事ではないからです。
「君が神様と言う立場に居たのなら、僕たちは一生懸命に逃げ回らずとも簡単に社会を放りだしてしまえるのに」という気分なんでしょう。
この二人はこの後どんな道を辿ったのかは皆さんにお任せしますが、二人はきっと幸せになりました。